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国際ロータリー 第2580地区中央分区

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「事実は小説よりも奇なり」

卓話 公開日 :

「事実は小説よりも奇なり」

卓話者:相澤愛会員

ロータリーに入会後、「4つのテスト」を知った時は、自分自身が仕事に対する心構えとして頭の中にあった考えを具現化してもらったようでとても共感したことを覚えています。その後、その4つのテストに忠実に、職業奉仕の道を邁進してまいりました。弁護士生活も32年目、この間、様々な案件に携わってきました。

「事実は小説よりも奇なり」という言葉がありますが、まさにそのとおり、世の中に起きうるたいていのことには、もはや驚くことはなくなりました。以前からいろんな方からリクエストをいただいていたこともあり、本日の卓話では、そんな弁護士として体験してきたお話をさせていただこうと思います。もちろんお話する内容は、守秘義務違反しないよう留意をしておりますので、その点はお含みおきください。

とりあえず15のケースを記載したメモをお手元にお配りしています。とても30分では全てをお話できませんので、本日は私が人間デュークボックスとなり、皆様からのリクエストに従い、時間の許す限りお話したいと思います。それではご希望の番号をおっしゃってください。

  1. 夫に犯行を再現させ検証した結果、無罪判決を獲得した件
  2. 高齢の薬事犯を更生させたくて某反社の事務所にお邪魔した件 
  3. 薬物事犯から抜け出せないアーティストの苦悩を垣間見た件
  4. 外国人が絡む案件の難しさを実感した件
    その1 日本の法律を非難し反省の色がない被告人
    その2 遺言執行に注文をつける相続人の配偶者
  5. 審判当日、親子のしこりが溶け、家族の絆を再確認した件
  6. 両親を亡くした姉妹がよりそって強く生きていく姿が美しかった件
  7. どんなに立派な人でも、実はいろいろな事情を抱えている件
  8. 相続人が実は他にも存在していた件
  9. 実は証拠が偽造されていた案
    その1 遺言が偽造されていた件
    その2 重要な証拠の日付が意図的に遡って記載されていた件
    その3 銀行員が印鑑を偽造して顧客の預金を横領していた件
  10. ホストクラブで注文したシャンパンを取り返したかった件
  11. どうしても離婚したくない、別れが切なすぎた件
  12. 強制執行の現場~文字どおりゴミ屋敷になっていた件
  13. 日本の営業秘密が中国に流出してしまった件
  14. 会社の共同経営者でもある夫婦が別れるのはとても大変だった件
  15. 裁判官と分かりあえた件
峯岸会員からのリクエスト(10)

ホストクラブで注文したシャンパンを取り返したかった件(民事事件)

弁護士会の無料法律相談を担当していた頃の相談です。新宿という場所柄もあったのでしょう、若い派手な女性がやってきて、「途中まで飲んだシャンパンを取り返せないか」という相談が持ち込まれました。どうやら昨晩、自分の誕生日だからとホストクラブに行き、100万円のシャンパンを入れて一緒に飲んだらしいのですが、アフターの約束が履行されなかったので、翌日になって、やっぱりシャンパンを取り戻したい、とのことでした。

法的な論点についてご説明はしたものの、私としては、自分の軽率な行動を顧みることのない彼女がまた同じことを繰り返すのではないかととても心配になりました。いろいろな意味で教育の大切さを強く実感した経験でした。

加藤芳信会員からのリクエスト(3)

薬物事犯から抜け出せないアーティストの苦悩を垣間見た件(刑事事件)

アーティストが薬物事犯に手を染めてしまうニュースはたまにみかけますが、私もそんな案件を担当したことがありました。新しい作品を作りたい、でもアイデアが枯渇している・・・そんな時、薬を使うと自分の感覚が研ぎ澄まされ音もクリアに聞こえ自分の才能が高まった感覚に陥るそうです。一度、手を染めるとやめられない蟻地獄のようだとのことでした。

当時、私は20代後半で、なんと被告人も同い年。接見室でアクリル板を隔てて対峙する度に、同い年でもこんなに隔てられた立場となっていることに、なんともいえない辛い気持ちになったことを今でも忘れられません。

内田会長からのリクエスト(5)

審判当日、親子のしこりが溶け、家族の絆を再確認した件(少年事件)

勉強も音楽もできる絵にかいたような優秀な少女が、深夜、学校の職員室に侵入して窃盗をしました。付添人として、家庭環境の調整につとめましたが、母親は世間体と建前を最優先するタイプで娘の心情に寄り添おうとしません。娘も娘でそんな母親へ心を許さない。このような家族関係では更生するどころか再犯のリスクさえあります。

親子関係の調整がつかないまま審判当日を迎えました。審判官が親子関係について質問を重ねるうちに、突然、母親が涙を流し娘に言いました。「ごめんね、これまで辛い思いをさせたのね。」世間体と建前が崩れた瞬間でした。その母親の姿を見て、娘も号泣。「お母さん、ごめんなさい。二度と馬鹿なことはしません。」これを見て、審判官も付添人もホッとしました。まさにこの瞬間を待っていたのです。この親子にはこれが必要だったんです。裸の感情をぶつけ合えない家族は本当の家族ではないのです。審判終了時、憑き物がとれたように優しい表情になった母親と、すっかり素直な子どもの表情に戻っていた少女の姿がまぶしかったです。

有賀会員からのリクエスト(2)

高齢の薬事犯を更生させたくて某反社の事務所にお邪魔した件(刑事事件)

起訴事実は薬物所持罪及び薬物使用罪の2件。薬物使用罪は尿検査結果により言い逃れが出来ませんでしたが、薬物所持罪は当初から否認していました。路上で職務質問された時、足元に薬物の袋は落ちていたのですが、被告人は「自分が落としたものではない、知らない。」と明らかに不合理な弁明を繰り返しておりました。私は、否認しないで認めた方が情状酌量の余地はあると考え、何度も接見に通いました。最初はシラを切っていた被告人ですが、少しずつ気持ちが通い合うようになりました。そんなある日、「実は、あの薬物の袋は自分が捨てた」と本当のことを打ち明け、裁判でも罪を認める決心をしてくれました。

被告人が反省して罪と向き合う気ならば、私も良き情状証人を見つけて有利な証言してもらおうと考え、被告人が共同生活しているという都内某所のアパートを訪ねました。そこにいたのは若い女性数名と小さい子どもたち。そのうちに、見るからにいかつい男性数名も帰ってきました・・・話をするうちに、どうやらそのアパートは某反社組織に属する方々が共同で生活している場所であることがわかってきました。私はなんとか平静を装い会話を切り上げ退室しましたが、今考えても、無茶しすぎで危ない体験だったなあとヒヤッとします(でも、変な言い方ですが、皆さん、とても気さくでよい方々ばかりでした。)

藤堂会員からのリクエスト(13)

日本の営業秘密が中国に流出してしまった件(民事事件)

中国が知的財産権を模倣するニュースはこれまでも報道されてきましたが、日本の超大手の石油化学会社のプラントの設計図や金型の図面(いわゆる営業秘密)が中国に流出した事件がありました。損害額は数億円にも上ります。依頼者の保有する技術と中国で展開されている技術の同一性の立証、日本から中国に流出した経緯などを立証するのは気が遠くなるような作業でした。数多くの関係者に話を聞き、化学プラントのことも勉強し、数年かかった裁判でしたが、無事に勝訴しました。

この裁判例は、当時の営業秘密の管理について企業の中でも意識が変わるようになったきっかけになりました。貴重な日本の技術が実際に流出し、莫大な損害を被った現実を目の当たりにし、技術の秘密管理の重要性を痛感した案件でした。

稲吉会員からのリクエスト(7)

どんなに立派な人でも、実はいろいろな事情を抱えている件(家事事件)

世にいう著名な方、社会的には立派とされている方々にまつわる案件もいくつか担当いたしました。論説員として知的で穏やかなイメージで通用している方が、DVを理由に妻から離婚請求されたケース、高度な国家資格を保有し、普段は合理的で適切な判断ができる方も、自分が相続人になると、別人のように感情の動物と化してしまうケースなど、枚挙にいとまがありません。

遺産分割の際、長女VS母親・次女で争ったケースで、長女は、相続財産の分配も1円単位でこだわり、母親と妹に対して憎しみともいえる感情を抱いているケースがありました。その背景を探ると、小さい頃、母親は長女に大変厳しかった半面、次女は甘やかしていたようです。長女は、幼い頃の傷ついた気持ちを、大人になった今でも引きずっていたのです。

どんなに社会的に成功した方々であっても、誰しも何かしら事情を抱えて生きている、ということを痛いほど学びました。

清水幹事からのリクエスト(15)

裁判官と分かりあえた件

裁判官は両当事者に対して、当然、公平・中立である必要があります。しかしながら、一方当事者である代理人に心を開いてくれる時があります。それは、代理人にとって、時折、訪れるご褒美のような瞬間です。 まだ駆け出しの頃、姉と弟が骨肉の争いを繰り広げていた遺産分割調停事件で、私は担当裁判官の著作である法律書の記載を引用して準備書面を作成して提出しました。その裁判官は調停成立した後、若い弁護士を労おうと思ったのか、わざわざ別室に呼んでくれて、「あの論点はあなたの主張のとおりですよ。」等と褒めてくれました。苦労したかいがあったと嬉しかったものです。

また、最近では、裁判もWebで行うことが増えてきましたが、PCの画面中、裁判官と私だけになったとき、裁判官が、「後ろの言葉はなんですか?」と聞いたことがありました。その頃、私は、デスクの後ろに4つのテストを大きく印刷して貼っていましたが、その言葉が裁判官の目に入ったのです。「よい言葉ですね、私もロースクールの生徒に伝えたいです」と言ってくれました。これも別の意味で嬉しい経験でした。

 

まとめに代えて

そろそろお時間となりましたので、これで終わりとさせていただきます。皆さま、それぞれにリクエストをありがとうございました。

本日は、「事実は小説よりも奇なり」というテーマでお話をしてまいりましたが、これらの案件を通じて、弁護士として、人間として、様々なことを学びました。一言でまとめると、人間とは喜怒哀楽と向き合いながら、生きざるを得ない可愛い生き物だということです。先日のオープン例会では「福笑顔」という素晴らしお話を伺いましたが、人間は、笑顔だけで過ごすことはできません。喜怒哀楽に向き合い、それを乗り越えて必死に生きようとするところに人間の強さがあるのだと感じております。

ご清聴ありがとうございました。

 

卓話公開日 2026年 4月20日

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