「若者に伴走して見えたこと ― PROJECT HAJIMARIの歩みと、メンターたちの試行錯誤 ―」
卓話者:はじまりの場所 代表 市橋 宗一郎氏
東京練馬西ロータリークラブの皆さまには、PROJECT HAJIMARIの立ち上げから今日まで、後援として継続的なご支援をいただいてまいりました。若者たちの挑戦が形になるたびに、その背後には皆さまのお力添えがありました。誌面をお借りして、心より御礼申し上げます。
PROJECT HAJIMARIは、高校生・大学生を対象に、自分の「やりたい」というアイデアを半年間かけて実践し、形にする超実践型プログラムです。参加は無料。各チームに社会人メンター1〜2名がつき、月2〜4回のミーティングから報告会の準備まで伴走します。1チーム上限5万円の活動資金を支給し、地域の事業者・行政・団体との接点づくりも支援します。「やりたいことはある。でも、お金がない、やり方がわからない」という若者の「あと一歩」の壁を、伴走・資金・地域接点の三つで一体的に取り除く仕組みです。
2023年度に貴クラブとの共催で始まり、2024年度からは、はじまりの場所の単独主催として運営しています。この3年間の参加者はのべ55名・15チーム。連携校は約10校に広がり、今年度も18名・5チームが活動中です。何より誇りに思うのは、プログラムが終わっても若者たちが止まらなかったことです。白子川での自然ワークショップを地域団体として続けるチーム、地元の農家・和菓子屋・パン屋と連携した商品開発に発展したチーム、大学のアクセラレーターに採択され事業化を目指すチーム。防災をテーマに約20の事業者の皆さまと開いた「冬の文化祭」には300名を超える方にご来場いただきました。支援を受けた若者が、地域の新たな担い手になっていく。この循環こそ、皆さまのご支援が生んだ最大の成果です。
一方、その裏側で、支える側の私たちも悩み続けてきました。運営は社会人13名がメンター・運営・事務局を分担して担っていますが、初年度と2024年度までは、率直に言えば「メンター任せ」——各人の善意と経験に頼りきった体制でした。やがて表面化したのが、メンター同士の価値観の違いです。どこまで参加者に頑張らせるか、すなわちメンターがどこまで介入するか。そして、どこまで成功させるか。失敗も貴重な学びだという考えと、小さくても成功体験を持ち帰ってほしいという考え。どちらも若者を思えばこその信念で、どちらも正しい。会員の皆さまも、それぞれの事業の中で後進を育ててこられた方ばかりですから、部下や後輩にどこまで任せ、どこで手を貸すかというこの葛藤には、心当たりがおありかもしれません。教育に唯一の正解がない以上、真剣な大人が集まれば必ず考え方の違いが生まれます。しかし正しい考えが二つあるからこそ現場の判断はばらつき、どのメンターに当たるかで参加者の体験の質が変わってしまう。メンター自身も「自分の関わり方はこれでよいのか」という迷いを一人で抱え込んでいました。これは見過ごせない課題でした。
そこで2025年度、二つの改革を行いました。一つは、メンター向け共通ガイドの作成です。手順を縛るマニュアルではなく、迷ったときに何を大切にして判断するかという「軸」を全体で揃えるためのものです。もう一つは、隔週定例ミーティングの導入です。それまで一人で担当チームを抱えていたメンターが、悩みを持ち寄り、互いの視点を借り合えるようになりました。価値観の違いは、放置すればばらつきですが、持ち寄れば選択肢の広さになります。属人的な伴走から、チームで担う伴走へ。これが最大の転換でした。 そして今年度は、参加者へのサポートをオンライン中心から対面重視へと切り替えました。画面越しでは届かない雑談や表情の変化があり、やはりコスパ、タイパではないということを改めて実感しました。メンター陣で負担と知恵を分かち合う体制が整ったからこそ、より手厚い伴走に踏み出せました。対面重視の伴走の中でどんな挑戦が形になっていくのか、年度の終わりに改めて皆さまへご報告できることを楽しみにしています。
若者に「挑戦しよう」と語りかける私たち自身が、運営のあり方を試行錯誤し続けた3年間でした。若者の挑戦を支える営みは、支える大人にも同じだけの学びをもたらします。その喜びを皆さまと分かち合えてきたことを誇りに思うとともに、引き続き、若者たちの挑戦を温かく見守っていただけましたら幸いです。
卓話公開日 2026年 8月24日